シマミミズを使って家庭から出る生ゴミを分解して堆肥を作り、その堆肥を家庭菜園に利用して野菜を育てるというエコリサイクル活動を行う人が増えています。
このようにシマミミズを使って生ゴミから堆肥を作ることや、その堆肥のことをミミズコンポストと言います。
ミミズコンポストは、「生ゴミの排出量の削減」と「生ゴミの焼却のためのエネルギーの削減」や「焼却時に発生する温暖化ガスの削減」を両立する方法としても注目されています。
ミミズコンポストを始めた方の中には、今以上にシマミミズを増やしてもっと多くの生ゴミを処理したいと思っている方もいらっしゃるでしょう。
今回は、そんな方のために、シマミミズの増やし方と増やし方のポイントについて詳しく解説します。
そもそもシマミミズはどうやって増える?
シマミミズなどのミミズは1匹の体の中にオスとメスの両方の器官を持っている雌雄同体で、オスとメスの区別がありません。
2匹のシマミミズが交尾をすることによってお互いに精子を交換して両方のシマミミズが産卵できるようになりますので、2匹以上のシマミミズがいると繁殖して増えていきます。
その後、両方のシマミミズが卵包という膜に産卵をして、数か月後に卵が孵化して赤ちゃんミミズが生まれます。
つまり、オスとメスの区別がない雌雄同体ですから、2匹のシマミミズが産卵をすることができるのです。
オスとメスの区別がある生物は交尾をしてメスだけが産卵して繁殖しますので、それに比べると2倍のスピードで繁殖できるということもできます。
シマミミズの繁殖スピードはどれぐらい?
シマミミズは一旦交尾をして精子を交換すると、その後数週間にわたって週に数個の卵を産卵し続けることができます。
ただし、シマミミズの産卵数は生育環境によって変わりますので、繁殖に適した環境を保つことが重要となります。
シマミミズは孵化して約4~8週間後には成体になり産卵できる体になります。
1個の卵から1匹~5匹程度の赤ちゃんミミズが生まれますので、良好な生育環境を保つことができれば1年間で5~10倍に増やすことができます。
卵が孵化するまでの日数は温度によって変わり、15℃で46日、25℃で19日、10℃で86日です。
このことから、気温が25℃程度になる春~梅雨時期や秋ごろに繁殖スピードが速くなることが分かります。
また、6℃以下では孵化しないとも言われていますので、冬場の温度管理はシマミミズを増やすためには重要だということになります。
なお、シマミミズの寿命は2~4年ほどで、生育環境が良ければさらに長生きする可能性もあります。
シマミミズの増やし方は2つ
シマミミズの増やし方としては、主に次の2つが挙げられます。
- ミミズコンポストを活用する
- シマミミズを飼育する
以下では、それぞれについてくわしく解説します。
ミミズコンポストを活用する
ミミズコンポストを活用してシマミミズを増やすことができます。
ミミズコンポストとは、生ゴミなどの有機物をミミズと微生物の力によって分解して栄養価の高い堆肥に変える方法のこと、またはその堆肥のことです。
コンポスト容器の中にココナツ繊維などの床材とシマミミズを入れて、生ゴミを与えることによってシマミミズが繁殖して増えます。
コンポスト容器としては、衣装ケースなどを利用してDIYできるほか、ミミズコンポスト専用の容器が市販されているものを利用することができます。
初めてミミズコンポストを始めるような場合は、ミミズコンポスト専用の容器や土、シマミミズなどがすべてセットになったものを購入した方が手軽に失敗なく始めることができます。
ミミズコンポストの温度や湿度などの設置環境をうまく管理してシマミミズが繁殖しやすい環境を保つことができれば、1年間で5~10倍に増やすことができます。
シマミミズを飼育する
シマミミズを飼育して増やすこともできます。
フタ付きの飼育容器の中に、シマミミズの生育に適したココナッツ繊維などの床材を敷き、2匹以上のシマミミズを入れてエサと水分を与えると繁殖して増えていきます。
基本的にはミミズコンポストと同じですが、飼育する場合はエサとして生ゴミだけではなく熟成された腐葉土や牛糞堆肥などを与えます。
シマミミズの増やし方のポイント
シマミミズを増やすためにはいくつかのポイントがあり、主なものは次の5つです。
- 生育環境を適切に保つ
- 脱走対策をしっかりと実施する
- シマミミズに与えてはいけないものに注意する
- シマミミズの好物を与える
- 土壌のPH値を調整する
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
生育環境を適切に保つ
シマミミズを増やすためには、コンポスト容器や飼育容器の設置場所や容器内の生育環境を適切に保つことが重要です。
日本には四季があり、夏場と冬場では温度も湿度も大きく違いますので、夏場と冬場では管理ポイントも対策も違ってきます。
たとえば、温度や湿度については、次のような対策を行う必要があります。
夏対策
シマミミズの適切な生育温度は10℃から28℃で適温は24℃程度ですので、なるべく適温に近づけるようにしましょう。
この適切な温度範囲から外れてしまうとシマミミズの活動が鈍くなり繁殖も悪くなります。
近年では、夏場に気温が30℃を超えるような日も多くなっていますので、そのような場合はコンポスト容器や飼育容器を風通しの良い場所に移動させたり、容器に水をかけて気化熱で冷やしてやるなどの対策をしましょう。
冬対策
シマミミズは夏場よりは冬場に強い傾向がありますが、気温が低くなる場合は次のような対策を行いましょう。
- コンポスト容器や飼育容器を南側に置く
- コンポスト容器や飼育容器のミミズのフン(堆肥)の上にビニールなどを敷く
- ビニールカバーなどでコンポスト容器や飼育容器全体を覆う
温度が6℃以下になると卵が孵化しませんので、温度管理を適切にしてシマミミズの繁殖が悪くならないように注意しましょう。
脱走対策をしっかりと実施する
シマミミズは、コンポスト容器や飼育容器の中が適切な環境になっていない場合は脱走してしまうことがあります。
脱走する原因としては、次のようなことが考えられます。
- 新しいコンポスト容器や飼育容器に移した直後で新しい環境に慣れていない
- エサを分解してくれる微生物が不足しているく
- コンポスト容器や飼育容器内の水分が多すぎる(水でびしょ濡れになっている)
- 生ゴミをたくさん与え過ぎた
- シマミミズが嫌いな生ゴミを与えた
- 振動を与えたり振動のある場所に設置した
シマミミズはデリケートな生き物ですから、大きな環境変化を急激に行わないことが大切です。
また、シマミミズの脱走対策としては次のようなものがあります。
- 新しい環境に慣れるまで1週間程度は生ゴミを入れない
- 微生物がたくさんいる落ち葉を与える
- 水分は霧吹きで補給してびしょ濡れにしない
- 生ゴミは少量ずつ与える
- シマミミズが嫌いな生ゴミを入れない
- 振動を与えたり振動のある場所に設置しない
シマミミズにとって過ごしやすい環境になっていれば脱走することはありません。
シマミミズに与えてはいけないものに注意する
シマミミズに与えてはいけないものを与えてしまうと土壌が腐ったりシマミミズが死んでしまったりするので注意が必要です。
与えてはいけないものとしては、液体(ジュース、牛乳、みそ汁)、刺激物、味付けの濃いもの、肉や魚の骨などがあります。
また、入れない方が良いものとしては、ねぎ、油、ガム、柑橘類、犬や猫のフンなどがあります。
シマミミズの好物を与える
シマミミズに好物のエサを与えると、シマミミズをより太く健康的に育てることができます。
その結果、シマミミズの活動が活発化して「分解速度が高まる」「栄養豊富な土壌ができる」「繁殖スピードが速くなりたくさん増やせる」などの大きな効果が期待できるようになります。
シマミミズを太らせるおすすめメニュー
シマミミズの好物のエサは、甘くて軟らかく水分が多い果物(メロン、スイカなど)や野菜(トマト、カボチャのわた)などです。
その他にも、鶏のエサ(50%)、小麦粉(10%)、スキムミルク(10%)、米ぬか(20%)、石灰(10%)を混ぜたものを、週1回程度表面にうすくふりかけるとシマミミズを早く太らせることができます。
土壌のpHを調整する
シマミミズは、弱酸性~弱アルカリ性(pH5.0~9.0)の環境を好み、酸性やアルカリ性に偏った環境では活動が鈍くなります。
一般的にシマミミズのいる土壌は酸性に傾きやすいため、適宜pHの調整をする必要があります。
酸性に傾いた土壌を弱酸性~弱アルカリ性にするための具体的方法として、コンポスト容器や飼育容器の中に卵の殻を入れる方法が有効です。
卵に殻はなかなか分解されませんので、よく乾燥させた後にミキサーなどで細かく粉砕してから入れるのがコツです。
良質なシマミミズを購入すれば、より増やしやすくなる!
この記事では、シマミミズの増やし方と増やし方のポイントについて詳しく解説しました。
シマミミズは雌雄同体で繁殖スピードも速いため、適切な環境を維持することによって1年で5~10倍に増やすことができます。
シマミミズを増やす方法としては、ミミズコンポストを活用したりシマミミズを飼育したりする方法がありますが、いずれも温度や湿度などの生育環境を適切に保つことが重要なポイントとなります。
シマミミズが好むエサを与えることによってシマミミズの活動が活発になり、繁殖スピードも速くなり、よりたくさん増やすことができます。
また、シマミミズは魚釣りのエサや爬虫類・両生類・魚類のエサとしても使われるため、釣具店やペットショップ・ホームセンターなどから購入することができますが、海外からの輸入品で弱っていることが多いので注意が必要です。
良質で元気なシマミミズを購入すれば、それだけ増やしやすくなるため、できればシマミミズ専門店から購入することをおすすめします。
代表的なシマミミズ専門店としては農業経営研究所があり、ここでは「金子みみずちゃんの家」というミミズコンポストのセットも販売しています。