ミミズはにょろにょろとして見た目がグロテスクなため、気持ち悪いというイメージがあるかもしれませんが、実は畑や家庭菜園などに非常に良好な堆肥や液肥を提供してくれる益虫として知られています。
ミミズは土を食べて、土の中に含まれている有機物や微生物などを消化吸収して粒状のフンを排泄します。
そのミミズのフンは植物の生育に必要なミネラル分などを豊富に含んでいるうえに、植物の生育に適した団粒構造なっているため土壌改良に役立ちます。
ミミズに積極的に生ゴミなどの有機物を食べさせて、そのフンをミミズ堆肥として農業や家庭菜園で利用している事例もたくさんあります。
この記事では、ミミズ堆肥を畑や家庭菜園に導入することで得られる効果やその成功事例、ミミズ堆肥を導入する方法などについて詳しく解説します。
ミミズ堆肥を畑や家庭菜園に導入することで得られる効果
冒頭でも説明したように、ミミズは自然界の中で土壌改良の役割を担っており、ミミズが排出するフンによって堆肥を作って活用する手法が実際の農業においても積極的に行われています。
ミミズはバクテリアなどの微生物と一緒に植物が育ちやすい土壌へと変えていくことができます。
ミミズは、畑や家庭菜園にとって余分なものを体内で分解するだけでなく、窒素やカルシウム、リン酸、カリウム、マグネシウムなど野菜に不可欠なミネラルをフンとして排出するため、畑や家庭菜園にとってよりよい土壌にすることができるのです。
ミミズ堆肥を導入することによる効果は、主に次の7つです。
- 土壌のpH改善
- 土壌微生物の増加
- 土壌肥沃度の向上と収穫量の増加
- 水はけの良さの向上
- 保水性の向上
- 保肥性の向上
- コスト削減
以下で、それぞれについて詳しく説明します。
土壌のpH改善
ミミズの体には石灰腺という器官があって、炭酸カルシウムを分泌しています。
日本の土壌は酸性雨によって酸性に傾いていますので、植物が生育しやすい弱酸性の土壌にするためには、人為的に石灰分を施してpH6.0~6.5にする必要があります。
しかし、ミミズが土壌中にいれば炭酸カルシウムを分泌していますので、人が石灰分を施さなくても土壌を弱酸性に改善することができるのです。
土壌微生物の増加
ミミズは、土と一緒に有機物や土壌微生物を食べて栄養としていますが、食べられた微生物はミミズの腸の中で増殖して土と一緒にフンとして排出されます。
その結果として、土壌中の土壌微生物が増加することになります。
また、ミミズのフンは多孔質形状をしているため微生物のすみかとして最適で、土壌を植物の生育に適したフカフカの団粒構造に変えるのにも役立ちます。
土壌肥沃度の向上と収穫量の増加
ミミズは前述のように、炭酸カルシウムを分泌し、また土と有機物と土壌微生物を食べて腸の中で微生物を増殖させてフンとして排出します。
このミミズの活動によって、土壌のpHが植物の生育に適した弱酸性に整えられ、土壌微生物が増加して土壌肥沃度が向上します。
この肥沃化した土壌で野菜などの植物を育てると、その収穫量が増加します。
水はけの良さの向上
ミミズは土を食べながら移動しますので、この動きによって土壌が掘り起こされて耕された状態になり通路に小さな空間ができます。
これによってミミズがいる土壌は、フカフカになり空気が通りやすくなり水はけもよくなります。
また、ミミズの体を覆っている粘液にも窒素が含まれていますので、ミミズが動き回ることで土壌に混ぜられて、さらに良い土になっていきます。
保水性の向上
ミミズのフンは多孔質の団粒構造になっています。
つまり土壌の小さい粒子が集まって結合して団粒化しますので、保水性が高まります。
土壌の保水力の指標として「最大容水量」がありますが、多数のミミズが生息する土壌の「最大容水量」の方が、ミミズがほとんどいない土壌よりも7.1%も高いというデータもあります。
保肥性の向上
ミミズのフンは団粒構造で保水性が高いため、降雨時に土壌中の養分や肥料成分が流失するのを防ぎます。
その結果、肥料の効果が長持ちし、野菜などの植物が必要とする栄養素が欠如することがなくなり、土壌の保肥性が向上します。
コスト削減
ミミズが土壌中の有機物の分解を促進することで土壌肥沃度が向上します。
そのため、野菜などの植物を育成するために必要な肥料の使用量を減らすことができますので、長期的にコストを削減することが可能になります。
実際のミミズ堆肥活用成功事例
実際にミミズ堆肥を活用して成功した事例を3例紹介します。
成功事例1
東急電鉄の三軒茶屋駅では、ミミズコンポストを利用して野菜くずやコーヒーかすをミミズに食べさせて、良質な堆肥・液肥の収穫と生ゴミの排出削減に取り組んでいます。
収穫した堆肥や液肥は、世田谷線沿線でフラワリングを行っている地域の方々に提供して肥料として活用してもらい、循環型社会構築の一翼を担っています。
東急電鉄の社員も楽しみながら参加しており、世田谷線沿線の方々との交流の場としても重要な取り組みとなっています。
今後も、生ごみの排出抑制と肥料の収穫を継続し、三軒茶屋駅独自の環境活動としてミミズコンポストを通じて環境負荷低減に貢献していくこととしています。
成功事例2
近年問題となっている食品ロスの一つとして学校給食での食べ残しの問題があります。
平成25年度の環境省による調査結果では、給食の食べ残しは児童・生徒1人あたり年間17.2kgであり、日本全体では約5万tと推計されています。
この食べ残しの多くは焼却処分されるため、焼却時に発生する二酸化炭素も地球温暖化の原因物質となるため問題となっています。
そこで、大阪府立大学の研究グループは、給食の食べ残しをミミズに食べさせて堆肥化することを、大阪府立藤井寺支援学校をモデル校として大阪府教育庁の協力を得ながら検証しました。
その結果、ミミズによって作られた堆肥は、堆肥の性質を示すC/N比(炭素量と窒素量の比率)では一般的な堆肥と同程度となったものの、窒素やカリウム、マグネシウムなどのミネラルが非常に豊富に含まれることを確認しました。
次に、そのミミズ堆肥を使ってコマツナの発芽試験を行い、発芽の良さを示す発芽インデックスが一般的な堆肥の約2倍となり、堆肥に含まれる植物の成長促進や病害抑制機能をもつ細菌群の割合が増加していることを確認しました。
これらのことから、これまで焼却処分されていた給食の食べ残しからミミズ堆肥が作れることと、そのミミズ堆肥は通常の堆肥よりも優れていることが実証されました。
この研究は、給食の食べ残しの問題だけではなく、その他の食品ロスにおいてもミミズ堆肥化によって、資源循環型社会を構築することの一助になることを示したものとして注目されています。
成功事例3
鹿島と狛江市は共同で狛江版CSA(Community Supported Agriculture:地域が支える農業)発足準備協議会を立ち上げて、地域が支援する都市型農業モデルの実証試験を行っています。
この中でミミズコンポストの実証実験も行われており、農地から発生する野菜クズや飲食店から発生する調理クズなどをミミズの力によって堆肥化しています。
収穫されたミミズ堆肥は市内の農家で野菜の生産に使われますので、市内で発生する生ごみを減量し、地産地消の野菜を生産する循環型農業を実現することができています。
ミミズ堆肥を導入する方法は3つ
畑や家庭菜園などにミミズ堆肥を導入する方法は、主に次の3つです。
- ミミズを土壌に呼び込む
- ミミズ堆肥を購入する
- ミミズ堆肥を自分で作る
以下で、それぞれについて説明します。
ミミズを土壌に呼び込む
ミミズがいない土壌にミミズを呼び込むには、有機物を散布するのが効果的です。
たとえば、鶏糞や米ぬかなどの有機肥料、野菜の切りくず、コーヒーかす、茶殻などでもかまいません。
このときに、1種類だけではなくさまざまな種類の有機物を投入すると、土壌中の微生物の種類が増えてミミズが寄ってきやすくなります。
有機物を散布した後は、頻繁に耕さずに繁殖するのを待つこともポイントです。
ミミズは巣穴を作って生活しているため、頻繁に耕すとすみかがなくなってミミズがいなくなります。
また、耕すことによってミミズが傷ついて死んでしまったり、耕すときの振動がストレスとなって逃げ出してしまうこともあります。
ミミズ堆肥を購入する
ミミズ堆肥を購入して、畑や家庭菜園などに撒くこともできます。
ミミズ堆肥は総合通販サイトなどからも購入することはできますが、専門店の方が質の高いミミズ堆肥を購入することができるようです。
「ミミズ堆肥 購入」などのキーワードで検索すれば多くの販売サイトが見つかります。
ミミズ堆肥を自分で作る
最後に紹介するのはミミズ堆肥を自分で作る方法です。
大規模な畑の場合は難しいですが、自宅の家庭菜園で使う程度であれば十分に賄うことができますし、自宅から出る生ゴミの削減ができて一石二鳥です。
ミミズ堆肥を作るためにはミミズコンポストが必要になりますが、これには自作する方法とセット品を購入する方法があります。
初心者だったり、失敗なく手軽に始めたいというような場合にはセット品を購入した方が良いでしょう。
費用面では自作した方が安くなりますが、万一失敗してしまった場合は再度自作するための費用や時間がかかってしまうことに注意が必要です。
ミミズ堆肥を手軽に導入したいなら、ミミズコンポスト導入がおすすめ
この記事では、畑や家庭菜園などにミミズ堆肥を導入したいと考えている方のために、ミミズ堆肥を畑や家庭菜園に導入することで得られる効果やミミズ堆肥化の成功事例、ミミズ堆肥を導入する方法などについて詳しく解説しました。
ミミズ堆肥を大規模に導入したいのであれば、ミミズ堆肥を購入する方法がおすすめです。
また、時間がたっぷりあるのであればミミズを土壌に呼び込むような運用も検討すべきでしょう。
しかし、小さい畑や家庭菜園に手軽に導入したいのであれば、ミミズコンポストを使って自分でミミズ堆肥を作るのがおすすめです。
たとえば、農業経営研究所の「金子みみずちゃんの家」には、コンポスト容器やミミズ、専用の土などの必要なものがすべてセットになっていて、詳しい説明書も付いているのでおすすめです。