
ミミズコンポストは、家庭から出る生ごみの量を削減できる点で注目を集めているたい肥化手法のひとつです。
環境にやさしいライフスタイルを実現できることから、実践してみたいと考える人も多いでしょう。
しかし、気になるのは「臭い」の問題です。
たとえば、「生ごみを時間をかけてたい肥に変えるときに、臭いが発生するのでは?」「ミミズを大量に飼育したら、においが強くなるのでは?」といった不安を抱く方もいるはずです。
この記事では、ミミズコンポストからどのような臭いが出るのか、そして臭わないようにするコツ、万が一臭ってしまったときの対処法について詳しく説明します。
ミミズコンポストはどんな臭いがする?

ミミズコンポストはどんな臭いがするのでしょう。
実際に使用している人の多くは「ほとんど無臭」と感じており、土のような自然なにおいがすることが多いです。
自然科学観察研究会による発表では、小学生の実験においてシマミミズを入れたコンポストは「野菜と果物の皮とへた」を使ったときに一番におわなかった、という結果が出ています。
この実験では「ミミズあり」と「ミミズなし」の8つの容器を25日間観察し、目隠しでにおいの違いを比べるなど、科学的な方法で検証が行われました。
ミミズがいることで素材が早く分解され、嫌なにおいが出にくくなることが実証されています。
この仕組みは、ミミズと微生物の協働によって生ごみが効率よく分解・発酵されるため、腐敗が起きにくく、悪臭が出にくい構造になっているから実現するのです。
さらに、通気性を確保する設計になっているため、酸素を利用した「好気性分解」が中心となり、臭いの原因となる「嫌気性分解」は起こりづらくなっています。
つまり、ミミズコンポストは一般的なコンポストに比べて、臭いが少ないという特徴があります。
ミミズコンポストが臭う原因と対処法

本来は無臭に近いミミズコンポストですが、管理がうまくいかない場合には臭いが気になることもあります。
ここでは、臭いが発生する代表的な理由とその対処方法を紹介します。
生ごみの入れすぎ
与える生ごみの量が多すぎると、ミミズが処理しきれずに腐敗が進行し、悪臭の原因になります。
たとえば、シマミミズの体重が約0.4gだとすると、500gの群れでは一日に250g程度の生ごみが適量となります。
500gの群れは、おおよそ500匹前後のミミズに相当します。
通販などで「〇〇匹セット」として販売されているものを目安にすると良いでしょう。
それ以上の量を継続して投入すると、分解が追いつかず、生ごみが腐ってしまう可能性があります。
また、気温が高い夏や寒い冬には、ミミズの活性が落ちて処理能力が低下するため、より臭いが出やすくなります。
対処法は、生ごみの投入量を見直し、必要であれば一時的に減らしてください。
すでに多く投入してしまった場合は、未処理の生ごみを取り除くとよいでしょう。
酸性に傾きすぎ
コンポスト内の環境が酸性に傾きすぎていると臭いが出ることがあります。
ミミズが生きていくのに適正なpHは、5.0~9.0の間といわれています。
つまり、弱酸性~弱アルカリ性の間で生きていけるということですが、生ごみを入れていくうちに、コンポスト内は酸性に傾きやすくなります。
なんとなくミミズの元気がない場合、コンポストの環境が酸性に傾いてしまっているかもしれません。
対処法としては、コンポスト内の環境を中性に戻してあげることが挙げられます。
具体的には、卵の殻を粉々にしたものや、竹炭を撒いてあげましょう。
竹炭には酸性をやわらげる効果があり、ミミズにも安全です。
強すぎる酸性やアルカリ性は、ミミズの体に負担をかけるため、注意が必要です。
酸素が行き渡ってない
嫌な臭いがしてきた場合、嫌気性分解が進んでいる可能性があります。
嫌気性分解とは、酸素が少ない状態で嫌気性微生物が分解を進めていくもので、分解の際に硫化水素・メタンと言ったガスを発生させます。
そのため、臭いが出てきてしまいます。
原因は嫌気性微生物が増えていること、コンポスト内に空気が行き渡っていないことです。
対処法として、コンポストをかき混ぜてあげると空気が循環して、好気性微生物が増え、臭いがしなくなります。
また、コンポスト容器を通気性の良いものにすると嫌気性微生物を減らすことができます。
DIYでコンポスト容器を作る際は、空気穴を開けてあげると良いでしょう。
臭いがひどいと近隣トラブルになることもあるため、集合住宅などではベランダ設置の前に、自治体の環境衛生課などに相談するのが安心です。
エサがミミズに適していない
エサがミミズに合っていない場合、エサを食べなくなってしまいます。
たとえば、野菜くず(キャベツ・にんじん・バナナの皮など)は好物です。エサを食べないと、生ごみは分解されないため、腐ってしまい臭いが出てきます。
また、ミミズに合っていないエサを与えるとミミズは元気がなくなり、コンポスト全体の環境も悪くなります。
たとえば、柑橘類などはリモネンが含まれているため、ミミズには有害です。
ほか、ネギ類、調味料のついた料理もNGです。
ミカンの皮など生ごみとして処理したくなりますが、ミミズにとっては悪影響を及ぼすので与えないようにしましょう。
対処法として、ミミズに適しているエサ・適していないエサを事前に把握しておきましょう。
肉や魚をミミズコンポストに入れても大丈夫ですが、大量に入れると腐敗臭がしたり、虫が集まりやすくなったりします。
ミミズが食べきれる量に調整して、少しずつ入れるようにしてください。
堆肥に窒素が含まれてよい肥料になる効果もあるため、使い方さえ注意すればメリットもあります。
詳しくは、次の記事で紹介しています。
ミミズが嫌うエサを入れないように注意しましょう。
ミミズが死んでいる
ミミズが死んでいると生臭い臭いがします。
これは死んでしまったミミズが体から酵素(アンモニア分)を出して体を溶かしているからです。
死んでしまったミミズは自ら体を溶かして土に還っていきます。
しかし、アンモニア分のため、生臭い独特の臭いがしてきます。
ミミズコンポストから独特の臭いがしてくる、コンポストを覗いてもミミズが見当たらない場合は、ミミズは全滅してしまっている可能性が高いです。
対処法として、ミミズの死骸が見つかる場合は取り除きます。
ミミズが残っている場合は、悪臭や雑菌が残っている床材でそのまま育てるのは好ましくないため、新しい環境に引っ越した方が良いです。
残った土は生ごみを取り除けばたい肥として使えるので、ミミズとたい肥は分け、日光に当てたり乾かしたりして消毒しましょう。
たい肥を自分の家の家庭菜園などで使うだけなら、特に問題はありません。
ただし、人にあげたり売ったりする場合は、「肥料の品質の確保等に関する法律(旧・肥料取締法)」を守る必要があります。
たい肥を渡すときに、成分や原料などを表示したり、登録申請のために書類を提出したりしなければならないこともあります。
人にたい肥をあげたいと思ったら、農林水産省や住んでいる地域の役所に相談してみると安心です。
ミミズコンポストが臭ってきた時のチェックリスト

ミミズコンポストが臭ってきた場合のチェックリストです。
臭いがしてきたと感じたら次の点をチェックしましょう。
- ミミズは元気に活動しているか?
- 床材は湿りすぎていないか?
- 新しく入れた生ごみの量と種類は?
- 温度や湿度は適切か?
- 容器の空気の流れはスムーズか?
詳しく解説します。
ミミズは元気に活動しているか?
ミミズが元気に活動しているか確認しましょう。
ミミズは表面にはいないため、少し床材を掘り起こしてみてみましょう。
元気に動く場合は活発に活動していますが、ぐったりしている場合はミミズが元気ではないことがわかります。
また、ミミズを直接見るのは苦手という方は、エサの減り方を確認してください。
エサがいつも通り減っている場合は活発に活動している証拠ですが、エサがあまり減っていない場合、元気がない可能性があります。
夏場や冬場などは暑さ・寒さのせいで活動が鈍ることもあります。
コンポスト内の環境が悪い場合も活動が鈍る可能性があります。
場合によってはミミズが死んでしまって見当たらないということもあるかもしれません。
ミミズが活発に動いていない場合、何かしらコンポスト内の環境が悪い可能性があるため、まずはミミズの状況を確認しましょう。
床材は湿りすぎていないか?
ミミズは湿った場所を好みますが、皮膚呼吸をしているため、水分が多すぎても溺死してしまいます。
床材が乾燥していてもミミズにとって悪影響です。
また、必要以上に床材が水分を含んでいると、ミミズが処理しきれなかった生ごみの腐敗スピードがあがります。
床材はミミズにとって良い環境になるように調整しましょう。
具体的には、床材を握ってみて水分が滴るくらいが適正です。
床材が湿りすぎていないか確認しましょう。
新しく入れた生ごみの量と種類は?
生ごみが減っていない、生ごみが腐っていて臭いがしてくる場合、新しく入れた生ごみが原因と思われます。
生ごみの量が多すぎていないか確認しましょう。
特に夏や冬は、気温によってミミズの活動量が減るため、前回と同じ量の生ごみを入れたとしても、今回のミミズたちにとっては量が多いという場合があります。
一旦生ごみを取り除き、与える量を減らしましょう。
また、生ごみの種類についても気を付けなくてはなりません。
たとえば、柑橘類や玉ねぎ・にんにくなどの刺激物、味付けの濃いものなどを入れていないか確認しましょう。
柑橘類もネギ類も、味付けの濃いものもミミズにとってはNGです。
生ごみが減っていない場合は、ミミズに与えてはいけないものを与えていないか確認しましょう。
温度や湿度は適切か?
ミミズが快適に過ごせる温度は10℃~28℃です。
夏はコンポスト内の温度が上がり、28℃を簡単に超えることがあるでしょう。
ミミズは28℃以上で生ごみの処理能力が落ち、35℃以上になると死んでしまいます。
生ごみの処理能力が落ちることで、生ごみが腐敗して臭う可能性が高くなるため、夏に臭いがしてきたら、コンポスト内の温度を下げる工夫をしましょう。
丸めた新聞紙を濡らしたものを入れたり、氷を入れたりすると、コンポスト内の気温を下げることができます。
逆に冬は10℃を下回ると処理能力が落ち、0℃以下になると凍って死んでしまいます。
コンポストを毛布で覆ってあげたり、一時的に室内に入れるなど工夫をしましょう。
また、湿度は60%~70%が理想といわれています。
ミミズは皮膚呼吸をする生き物なので、乾燥も水の与えすぎも苦手です。
ミミズが快適に過ごすための、ジメッとした状態を保つようにしましょう。
適度な湿度を保つためには、霧吹きで軽く水をかけて湿らせたり、湿った新聞紙を入れて調整するとよいでしょう。
湿度が高すぎると生ごみが腐る可能性があがる他、ミミズが死んでしまう可能性が高くなります。
また、ミミズは光をとても苦手とするため、コンポストの上には遮光シートや黒い蛇腹のフタをかぶせておくと安心です。
中が暗く保たれることで、ミミズのストレスが減り、快適に過ごせるようになります。
温度・湿度はミミズに合わせてあげましょう。
容器の空気の流れはスムーズか?
コンポスト容器内の空気の流れが悪い場合、嫌気性微生物が増えて分解を始め、臭いが出てくることがあります。
容器内の空気の流れはスムーズか、確認しましょう。
具体的には、臭ってきたら、コンポスト内をかき混ぜてあげると空気が入るため、臭いが抑えられます。
また、容器に空気穴があると空気の流れがスムーズになるため、かき混ぜなくても臭いがでません。
頻繁にかき混ぜないと臭いが出てくる場合は、空気穴が足りない可能性があります。
空気穴が十分に開いている容器に引っ越すことをおすすめします。
通気性の良い容器は専用容器がおすすめ

臭いが気になる方、通気性が良い容器をお求めなら、ミミズコンポスト専用容器がおすすめです。
ミミズコンポスト用に作られた容器のため、通気性が良く、臭わない工夫がされています。
また、たい肥・液肥を取りやすい構造になっているため、ミミズに触らずたい肥・液肥を取ることが可能です。
ミミズが出す液体(液肥)は、水で10倍程度に薄めて使うと、野菜や観葉植物の生育がよくなります。
容器の下にたまるので、定期的に取り出して使いましょう。
ミミズが苦手な方はもちろん、ミミズにとってもストレスが少ないため、人間・ミミズ両方に優しい設計です。
専門容器の「金子みみずちゃんの家」は国産のため安心・安全です。
各層にミミズの通り穴が空いているため、通気性も抜群で臭いにくい設計。
通気性の良い容器なら「金子みみずちゃんの家」をおすすめします。


ミミズコンポストは基本臭わない!臭ってきたら対策を!

今回は、ミミズコンポストの臭いについてご紹介しました。
ミミズコンポストは基本臭うことはなく、土のような臭いがします。
臭ってくる場合は、何かしら環境が悪くなっているせいなので、今回ご紹介した対策をすれば臭いは収まります。
チェックリストを使って、ミミズコンポスト内の環境が悪くなっていないか、確認しましょう。