
バイオ炭は、竹や木、もみ殻などの植物を、酸素の少ない状態で加熱して炭にしたものです。農業では土づくりの資材として、環境の分野では炭素を土の中にためる方法として注目されています。
土に混ぜると、炭の小さな穴が水や空気を抱え込むため、水はけと水持ちのバランスや通気性を整える方向に働きます。また、穴は土の中の微生物のすみかにもなります。さらに、植物が育つときに取り込んだ炭素を、炭の形で土の中に長く閉じ込めておけるため、地球温暖化対策の一つとしても期待されています。
この記事では、バイオ炭の仕組みと効果、活用方法、メリットとデメリット、J-クレジットとの関係までを解説します。
1) バイオ炭とは何か
バイオ炭とは、植物由来の原料(バイオマス)を、酸素を制限しながら加熱して炭化させたものです。燃やして灰にするのではなく、蒸し焼きにすることで、原料に含まれていた炭素の多くが、分解されにくい炭の形で残ります。
土に入れた炭は分解されにくいため、長い期間、土の中にとどまります。これがバイオ炭の大きな特徴で、土づくりと炭素の貯留を同時に行える資材として注目されています。
なお、バイオ炭そのものは肥料ではなく、微生物のえさ(栄養源)でもありません。土の環境を整える「土壌改良材」と考えるのが正確です。竹を原料にしたものは竹炭とも呼ばれ、畑に使う竹炭はバイオ炭の一種です。
2) バイオ炭の効果とは
バイオ炭を土に入れたときに期待される主な働きは、次の4つです。
一つ目は、水はけと水持ちのバランスを整えることです。炭の穴が水をためつつ、余分な水は通すため、乾きやすい土では水持ちを、締まりやすい土では通気性を補う方向に働きます。
二つ目は、養分を土にとどめやすくすることです。炭の表面が養分を引きつけるため、雨で肥料分が流れにくくなるといわれています。
三つ目は、微生物のすみかになることです。
四つ目は、酸性の土をやわらげることです。バイオ炭はアルカリ性のため、酸性に傾いた土のpHを上げる方向に働きます。ただし、入れすぎるとpHが上がりすぎるため、量には注意が必要です。
効果の出方は、土の種類や原料、粒の大きさ、施用量によって変わります。
土壌改良における効果
土壌改良の面では、まず、水はけと水持ちの改善が挙げられます。特に、水持ちの悪い砂っぽい土や、水はけの悪い締まった土で違いを感じやすいといわれています。
次に、養分の保持です。炭の表面に養分が引きつけられることで、肥料分が流れ出しにくくなり、施した肥料を無駄にしにくくなります。
さらに、酸性土壌の改良です。日本の畑は雨が多いために酸性に傾きやすく、バイオ炭はその酸度をやわらげる資材としても使われます。ただし、もともと中性〜アルカリ性の土では、かえってpHが上がりすぎることがあるため、土壌診断でpHを確認してから使いましょう。
環境への影響
バイオ炭が環境面で注目される理由は、炭素の貯留です。植物は育つときに空気中の二酸化炭素を取り込み、体の中に炭素としてためています。そのまま腐ったり燃えたりすると、炭素は二酸化炭素に戻って空気中に出ていきますが、炭にして土に入れると、炭素が分解されにくい形で長く土の中にとどまります。
つまり、バイオ炭そのものが温室効果ガスを吸収するのではなく、「植物が取り込んだ炭素を、空気中に戻さずに土の中に閉じ込めておく」ことで、温暖化対策につながるという仕組みです。
また、竹林の整備で出る竹や、もみ殻、剪定枝など、これまで捨てられていた資源を原料にできる点も、資源の有効活用として評価されています。
微生物との関係
バイオ炭の表面には、目に見えないほど小さな穴がたくさんあり、微生物のすみかになります。穴の中は水分や空気が保たれやすく、微生物にとって過ごしやすい環境です。
ただし、バイオ炭は微生物のえさにはなりません。微生物が増えて働くには、えさとなる有機物が必要です。そのため、バイオ炭はたい肥と一緒に使うのが基本です。たい肥がえさを補い、バイオ炭がすみかを提供することで、土の中の微生物が働きやすい環境づくりにつながるといわれています。
微生物の働きが安定すると、有機物の分解が進み、作物が養分を利用しやすい土に近づいていきます。
3)バイオ炭の活用方法
バイオ炭の活用は、農業での土づくりが中心ですが、ほかの分野での研究も進んでいます。農業では主に、畑に直接まいて土と混ぜる方法と、たい肥に混ぜてから使う方法があります。
たい肥に混ぜる方法では、たい肥づくりの段階でバイオ炭を加えることで、たい肥のにおいや水分の調整に役立つといわれています。完成したたい肥と一緒に畑に入れれば、土づくりの手間もまとめられます。
農業分野での活用
畑に使う場合は、植え付けの2〜3週間前に、バイオ炭を土の表面にまいて、深さ10〜20cmほどの土とよく混ぜ込みます。表面にまいただけだと、風で飛んだり雨で流れたりしやすくなります。
量は、土の種類やpHによって適量が大きく変わります。初めて使うときは、一部の区画に少なめに入れて様子を見ながら調整しましょう。土壌診断でpHを確認してから使うと安心です。
具体的な使い方や注意点は、竹炭を畑にまいて土壌改良を行う方法の記事でも詳しく紹介しています。
工業分野での活用
バイオ炭は、農業以外の分野でも研究や活用が進んでいます。たとえば、多くの穴を持つ性質を生かして、においや汚れを吸着する素材として使う研究があります。
また、コンクリートや建材にバイオ炭を混ぜ、炭素を建物の中に閉じ込める取り組みも進められています。これらはまだ研究や実証の段階のものも多く、今後の広がりが期待されています。
エネルギー分野での活用
バイオ炭を作る過程では、原料を加熱する際に、熱やガスが発生します。この熱を暖房や乾燥、発電などに利用する取り組みがあり、炭づくりとエネルギー利用を組み合わせることで、資源を無駄なく使うことができます。
なお、できあがったバイオ炭を燃料として燃やしてしまうと、閉じ込めていた炭素が二酸化炭素として空気中に戻ってしまいます。温暖化対策の効果を得るには、バイオ炭は燃やさずに土などに入れて、炭素をためておくことが大切です。
4) バイオ炭のメリットとデメリット
バイオ炭には、土づくりと環境の両面でメリットがある一方で、使い方を間違えると逆効果になる面もあります。導入する前に、両方を知っておきましょう。
メリット
一つ目は、土の水はけ・水持ち・通気性を整えられることです。乾燥や過湿の影響をやわらげ、根が張りやすい土づくりに役立ちます。
二つ目は、養分を土にとどめやすく、肥料を無駄にしにくいことです。
三つ目は、微生物のすみかになり、たい肥と組み合わせることで土の環境を整えられることです。
四つ目は、分解されにくいため、一度入れると効果が長く続きやすいことです。
五つ目は、炭素を土の中に長くためておけるため、温暖化対策にもつながることです。
デメリット
一つ目は、入れすぎるとpHが上がりすぎることです。バイオ炭はアルカリ性のため、中性〜アルカリ性の土や、酸性を好む作物(ジャガイモ、ブルーベリーなど)の畑では、少なめにする必要があります。石灰と同時に多く入れるのも避けましょう。
二つ目は、肥料ではないことです。バイオ炭だけでは作物に必要な養分は補えないため、たい肥や肥料と組み合わせる必要があります。
三つ目は、効果がすぐに目に見えるとは限らないことです。土の変化は少しずつ表れるため、長い目で土づくりを続けることが大切です。
四つ目は、細かい粉が舞いやすいことです。まくときはマスクを着け、風の強い日は避けましょう。
5) バイオ炭の収益化の可能性
バイオ炭は、土づくりの資材としてだけでなく、環境への取り組みとしての価値も注目されています。農業経営の面では、土の状態が整うことで、肥料の効率が上がったり、生育が安定したりすることが期待されます。
さらに、次に紹介するJ-クレジット制度や、環境に配慮した農産物としてのブランドづくりなど、新しい形での活用も広がりつつあります。
J-クレジットの活用
J-クレジットは、温室効果ガスの削減量や吸収量を国が「クレジット」として認証し、企業などに売買できるようにする制度です。この制度には、バイオ炭を農地に施用して炭素を貯留する取り組みが対象として含まれています。
つまり、バイオ炭を畑に入れることで土の中にためた炭素の量をクレジットとして認証してもらい、それを企業などに売ることで、収入につなげられる可能性があります。ただし、クレジットを得るには、制度への登録や施用量の記録、審査などの手続きが必要です。個人の農家が単独で行うのは手間がかかるため、複数の農家の取り組みをまとめて申請する事業者や団体を通じて参加するケースが一般的です。
制度の詳しい内容や最新の条件は、J-クレジット制度の公式情報で確認しましょう。
エコブランドとしての活用
環境に配慮した商品を選ぶ消費者や企業が増える中で、バイオ炭を使った土づくりは、農産物の付加価値にもなり得ます。
たとえば、「バイオ炭で炭素を土にためる農法で育てた野菜」として、環境への取り組みを消費者に伝えることで、ほかの農産物との違いを打ち出すことができます。地域の竹林整備で出た竹をバイオ炭にして使えば、地域の資源循環の取り組みとしても発信できます。
こうした取り組みは、農業者にとっても、環境に関心の高いお客様とのつながりをつくるきっかけになるでしょう。
6) バイオ炭の今後の展望
バイオ炭は、気候変動対策への関心の高まりとともに、今後さらに注目が集まると考えられます。土づくりと炭素の貯留を同時にできる点は、ほかの資材にはない特徴です。
また、製造方法や使い方の研究も進んでおり、原料や土の種類ごとの適切な使い方が、少しずつ明らかになってきています。
農業以外でも、建材などへの活用が研究されており、炭素をためる方法の一つとして、利用の幅が広がっていく可能性があります。
法規制と支援策
バイオ炭の普及には、制度面の後押しも重要です。前述のJ-クレジット制度では、バイオ炭の農地施用が炭素貯留の取り組みとして認められており、国としても温暖化対策の一つに位置づけられています。
また、地域によっては、放置竹林の整備と竹のバイオ炭化を組み合わせた取り組みなど、地域資源を生かした活動も広がっています。
補助金や支援策の内容は、時期や地域によって変わります。導入を検討する際は、国や自治体、地域の農業関係の窓口で最新の情報を確認しましょう。
7) まとめ
バイオ炭は、植物を蒸し焼きにして作る炭で、土に入れると、水はけ・水持ち・通気性を整え、養分を土にとどめやすくし、微生物のすみかになります。また、植物が取り込んだ炭素を土の中に長くためておけるため、温暖化対策の一つとしても期待されています。
一方で、バイオ炭は肥料ではなく、アルカリ性のため入れすぎには注意が必要です。土のpHを確認し、たい肥と組み合わせて、少しずつ土づくりに取り入れていきましょう。
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